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[Columns]京都府の国際交流員、オレーナさんはまれに見る才女

年の瀬を迎えた京都駅ビルは、人の洪水だった。その雑踏をかき分けながらエレベーターに乗り9階まで上がると、ゆったりとした別世界が広がっていた。(財)京都府国際センター。フロアに世界各国の出版物が並んでいる。日本人外国人を問わず、京都を訪れる人、住んでいる人たちに様々な情報を提供し、あるいは、京都在住の外国人を対象に知日・親日のための多彩なイベントも開催する、国際的な情報拠点なのである。
受付カウンターに外国人女性2人。来意を告げると、うち1人が「こちらへどうぞ」と立ち上がった。京都府国際交流員、ウクライナ人のシガル・オレーナさん(27)だった。知的でかわいらしい顔は抜けるように白い。それにしても、ウクライナ、ポーランド、あのあたりの若い女性はほんとに美しい。
オレーナさんの仕事は多種多様、かつ、クリエーティブで、VIPの通訳、公文書の翻訳などという、語学に限られたものではない。「外国人向けの『京都国際塾』というプログラムがあります」。
伝統文化の、例えば金剛流の能を勉強してもらうには、つづみ、笛、衣装、言葉などの基本について専門家の説明をしっかり聞かせる。その上で次の日、金剛能楽堂へ出かけていく。その日、演目は謡い→能→狂言→能と、4時間近くつづいた。それでも、参加した70人の外国人の8割は席を立たなかったという。
和菓子、酒、おせち料理などについても体験学習を実施した。
「昨年から『パイオニア京都』という新しいプログラムができました。京都の伝統技術に根ざした最先端の産業を外国人に見てもらうのです」。京都には脈々とつづく伝統産業があり、それを基盤にした最先端のテクノロジーが世界にはばたいている。こうした企業は京セラ、任天堂と数多い。
第1回目の昨年はノーベル賞受賞者、田中耕一さんが在籍する島津製作所を見学した。オレーナさんは、そういうイベントの根まわし、広報、日本語と英語のポスターづくり、人集めなど中心部を支えている。エンジン全開、かけがえのない戦力である。
ウクライナは首都キエフの出身。
「棒高とびの鳥人ブブカや作家ゴーゴリはウクライナ人です。でも、日本とのつながりは薄く、わたし、日本人なんて見たこともなかったんです」。それがなぜ。父親が大変な読書家で、家の本棚に日本の文学作品が並んでいた。
「源氏物語、芥川竜之介、川端康成、みんな読みました。ロシア語です。日本人の美意識、なかでも、人間の内面的なものを追究していく能が好きですね」。
キエフ国立教育言語大学日本語学科卒。キエフの日本大使館に2年間勤務したのち、2000年7月から京都府国際交流員。日本文化への思いは深い。お茶は裏千家、日本舞踊は若柳流、祇園コーナーの舞台で「祇園小唄」を踊ったこともある。剣道も習った。着物の着付は自分でできる。
ウクライナ語、ロシア語、日本語のほかに英語とドイツ語も堪能、大変な才女である。「将来は日本文学の専門家になりたいですね。大学院をめざして勉強します」(H)