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[Columns]ダイキン空調技研に気鋭の中国人スタッフがいる

目がやさしい。笑顔が絶えない。思いっきり明るい人がらなんだろう、この人は・・・。大阪・堺市金岡のダイキン空調技術研究所の研究員、朴春成さん(39)の第一印象は、ネアカ、秀才、弁舌さわやか、であった。当然、話がはずんだ。
「わたし、ふるさとは中国・長春です。祖父の代に朝鮮から中国に移住した朝鮮族の中国人なんです」。いうまでもなく、ダイキン工業の空調技術は世界でもトップレベル。国内でも業務用エアコンではダントツのシェアを誇る。その優秀な技術陣の一角を、朴さんは支えている。「日本との出会いですか? 文化大革命の混乱が落ち着いてきた中学3年生の時、外国語の授業が復活し、日本語を選択したんです」。日本語の勉強は高校時代もつづいた。「日本映画が好きで・・・。なかでも、寅さんが一番面白かった」。映画で日本語の勉強を? 「いいえ、中国では外国映画はみんな中国語にふきかえられるんです」。ならば寅さんの、あの四角い顔から「ニー、スワンシー、シェンマトンシー」(お前なんか、なんぼのもんだい)なんてタンカが中国語で聞こえてくるのだろうか。想像するだけでニンマリするではないか。80年、俊秀が集う北京の清華大学工程力学系(工学部)に入学、燃焼・伝熱を専攻する。学生数3万人。日本語を選択したのは、全学で30人しかいなかった。「非常に厳しい大学で、2科目落とすと留年、4科目落とすと退学でした」。卒業後、ハルビン工業大学の助教(助手)を1年間つとめた。そのころ、日本人の友人からすすめがあり、87年2月に来日、慶応大学大学院で「フロンの熱物性」の研究と取り組んだ。フロンは塩素を含むフッ素化合物で、カーエアコン、冷蔵庫などの冷媒として欠くことのできない物質。ただ、大気中に放出されると、地球を取り巻くオゾン層を破壊するため、紫外線が増加し、生物に悪影響を与える、とされる。環境にやさしい冷媒の研究開発―これが朴さんのテーマである。努力が実り「R134A」という冷媒の物性を解明した。その業績で工学博士を取得し、92年ダイキンの正式社員として入社した。かけがえのない、気鋭の研究者なのである。
「わたし、本当に恵まれています。昨年、永住ビザを申請したら、わずか2週間で許可がおりました。普通は半年以上といわれています」。これまでに日本熱物性学会幹事、日本冷凍空調学会物性値表委員会委員などを務めてきた。こうした実績、日本への貢献がプラスに働いたのだろう。今、各地の役所、企業などに朴さんのような気鋭の外国人スタッフが大勢いる。家族は朝鮮族中国人の奥さんと子供2人。(H)