KANSAI Close-up

HISTORIC KANSAI:日本人の故郷に、知的なスポットが

奈良県の「飛鳥」は日本人の故郷である。霧に包まれる山々。黒い瓦屋根。白塗りの壁。懐かしさに胸がしめつけられる。
ここは6〜7世紀、都が置かれた。その飛鳥時代はユーラシア大陸からの渡航者も多く国際的な栄光の時代だった。いまは静かな山村となりハイキング客が訪れるだけだが、飛鳥の都人は、精神的な宝物を残した。世界の文学史上名高い詩集「万葉集」だ。西暦759年までの350年間に日本人が詠んだ短詩4,500首を収録したもので、貴族や歌人だけでなく庶民の歌も多い。辺地に向かう兵士の望郷の想いや飢えに泣く妻子を嘆く下級官僚の歌は、1200年以上も経た現代でも暗唱する人がいる。これは、日本人の心の故郷でもある。
その万葉集の研究を目的とする施設が、このほど飛鳥にオープンし、講演や展示会などの活動を始めた。奈良県立万葉文化館(奈良県高市郡明日香村飛鳥)だ。万葉学者・中西進氏が館長に就任して、全国の万葉ファンの話題になる一方、中西氏が高名な比較文学者であることから海外研究者の訪問も目立つ。また自然鑑賞だけの飛鳥に、知的スポットが生まれ、立ち寄るハイキング客も多い。(田中準造)