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冷凍豆腐や梅干−和歌山・紀南で健康食品生産拡大、ベンチャー企業や伝統産業が元気

和歌山県田辺市や南部川村などの紀南地方で、健康食品産業が元気だ。冷凍豆腐で急成長しているベンチャー企業や生産拡大している伝統の梅干産業などで、いずれも紀南から世界に日本の伝統的な健康食品を送り出しはじめた。
「豆腐の冷凍製品はむずかしい」という常識を覆した田辺市の株式会社「テンドレ」。約千年前に中国から日本に伝えられた豆腐は、典型的な日本の庶民の食べ物として定着している。良質のタンパク質をはじめ、レシチン、サポニンなど健康維持増進の有効成分を豊富に含み、健康食品の代表でもある。しかし、「腐りやすく、崩れやすい」という弱点があり、「冷凍も困難」とあって利用の範囲や食品衛生管理に限界があるといわれてきた。 
「豆腐冷凍」の壁に挑戦したのが、脱サラで豆腐製造をはじめたテンドレの岩本博明社長である。「早朝から豆腐づくりをし、休日も取れないような労働条件を改善するには、豆腐の風味を維持した日持ちのする良質の冷凍豆腐しかない」と、1987年ごろから冷凍実験にかかった。試行錯誤の末、ある天然素材(企業秘密)を豆乳の段階で混ぜることで冷凍してもタンパク質の組成が変質せず、解凍すると普通の豆腐とほとんど変わらない口当たりになることに成功した。90年、「冷凍豆腐」の開発・生産の会社を設立、95年には特許も取り、96年にラテン語で「幸せの国」という意味のテンドレを社名にし、98年には中小企業研究センター賞を受賞した。
賞味期限でも1年は大丈夫という冷凍豆腐の完成に加えて、使いやすい形にカットして瞬間冷凍することで、輸送、保存、調理などが他の冷凍食材と同様に簡単になり、食品衛生検査も容易になった。「O−157」騒ぎのあった堺市が食材の衛生検査が十分にできると学校給食に使いはじめるなど、病院や業務用として需要が急速に伸び、年間生産は約2,500tで、年商約7億円の企業に成長した。「冷や奴は技術的には可能だが、まだ商品化はしていない」と岩本社長。商社を通じて米国にも約1年前から出荷され、年内にも米国の健康食を考えるグループとタイアップして輸出、全米での販売も始まるという。
田辺市に隣接する南部川村は日本一の梅の産地で、村役場に全国でただ1つの「うめ課」がある。全国の梅畑はここ数年微減状態だが、この村では増加している。1928年創立という老舗の南紀梅干株式会社でも工場増設など梅干の生産量が増え、米国西海岸を中心に約15カ国にも輸出し、原料の梅も一部は中国から輸入するほどだ。「減塩などに努めて健康食品として見直されたのとコンビニなどでのおにぎりや弁当販売の急増で梅干のほか練り梅などの加工品も売れ出した。梅の品種改良や梅干製法・味の開発を怠らず、現代人のニーズを充たす努力を続けたい」と同社の細川進社長らはいう。
この紀南では伝統の味も新しい技術も、2000年代の世界の食生活を視野に入れての挑戦をこれからも続けていくようだ。(J)