KANSAI Close-up

「カニ料理に対抗!フグ民宿」、福井・三方町の挑戦

京都府の真北にせり出したように連なる福井県西端の町々。その中のひとつ・三方町が近年、木枯らしや雪の季節になると、俄然活気づくようになった。かっては漁業と農業、夏場の観光などが中心で冬場は生気を失いがちだったのが、カニならぬ「フグが食える民宿」が登場し、泊まりがけ観光客の人気を集めているからだ。
三方町は人口9,390人。梅の名所でもある三方五湖や常神半島の海水浴場、観光道路のレインボーラインなどがあり、春から初秋にかけてここを訪れる人は多い。年間観光客数も100万人を軽く越えている。だが「北風と雪の山陰・北陸」のイメージが強く、晩秋から冬にかけて客足は遠のきがちだった。人気のカニも敦賀や能登、京都の丹後半島、兵庫の但馬、鳥取などに押され、どうしても太刀打ちできない。
そこで三方町観光協会や三方町商工観光課などが知恵をしぼって仕掛けたのが「フグの食べられる民宿」作戦だった。素材は、毒のほとんどない養殖ものと決めた。三方町漁協も加わり、県の指導も受けてさっそく町内で養殖が始まった。トラフグの稚魚と養殖技術は近畿大学の水産試験場などから導入した。民宿業者全員がフグの調理免許も取った。
こうして「フグ民宿」が1987年秋からスタートすると常神、海山、世久見、倉見などに点在する民宿134軒は「冬場も稼げる宿」に見事に変身した。
漁協によれば、現在傘下の4養殖業者の民宿向けフグ出荷量は10月から3月のシーズン中に総計15,000尾にのぼり、97年度には、同町のこの期間中の観光客数も47万人近くに増えて年間観光客の半数に迫る勢いだ。(ちなみに、フグ料理付き民宿の標準宿泊料金は4人以上のグループなら1人12,000円。少人数なら2−3,000円増し)
もちろん、これらの客の全てがフグ民宿客ではない。しかし、同町観光協会では「フグ効果は絶大でした。不況でうちも観光客全体が落ち込んでいますが、当分はこの路線でいきます。京阪神のほか、中京地区からの団体客も目立つようになりました」と自信満々だ。
余勢を駆って来年3月には常神半島の小川地区に80人収容の観光釣り桟橋がオープンの予定で、町中心部の鳥浜地区では縄文公園の建設が進められている。その工事現場の横を今日も、民宿での熱々のフグ鍋や薄造りの刺し身に引き寄せられた泊まり客満載の観光バスが勢いよく走り抜けている。
小さな町のデッカい知恵と挑戦が、不況に雄々しく立ち向かっている。(K)