KANSAI Close-up

[Columns]主権者教育は小学校から

 この半年、とりわけ高校現場では「主権者教育」が話題を呼んだ。選挙権年齢の引き下げに伴い、夏の参議院選挙で18歳高校生による投票が行われ、その動向が社会的にも関心を集めたためだ。10代の政治参加(新有権者は約240万人)問題を当人たちはどう受け止めたのか。選挙後彼らの本音に触れる機会があった。以下はその感想記。
 
 先の参議院選挙の投票率(総務省調べ)は、18歳51.17パーセント、19歳39.66パーセントで、18歳が10ポイント以上高かった。全体では53.01パーセント。高年齢世代ほど投票率は高いが、20代33.37パーセント、30代43.78パーセント、40代51.66パーセントと比較すれば、18歳の健闘ぶりが目を引く。高校生の意識動向がメディアの関心を集め、また学校では主権者教育の授業で模擬投票なども行われ実際の選挙について学ぶ機会が多く、好結果に繫がった。これに対し、19歳は選挙の意義を学ぶ機会が少ないうえ、都市部の大学進学者のうち住民票を地方の実家に残したまま不在者投票に行かなかった学生も多く、低投票率の要因になったと見られる。

 政治の問題は社会の問題であり、それは10代の有権者にとっても他人事ではない。では、彼らが自らの問題としてどの程度深く考え、政治と真摯に向き合い、投票所に出向いたのか。投票行動の中身を検証してみなければ、その評価は軽々にできない。

 この半年、10代の政治参加をテーマにした討論会の企画に幾つか係ったが、印象に残ったのは京都教育懇話会(会長堀場厚・堀場製作所社長兼会長)主催の8月定例会・公開学習会。この日の主役は約30人の高校生らだ(一部中学生も参加)。選挙における投票態度がいかに重要か、英国のEU離脱問題をテーマに、「離脱派」「残留派」「態度未定派」の3班に分かれ、国民投票を前提に模擬討論した。この中で企画した大人の側は問題意識の高い高校生らに本格論戦をと期待したが、思ったほど討論は盛り上がらず、活気付いたのは主権者教育に対する意見・総括討論の場。「政治家と討論する授業が必要」「学校には社会体験する機会が少ない」「日本の教育は受験型で話せない英語の授業が典型例。これではグローバル化に対応できない」など盛り上がった。要は今の学校と社会との間には厚い壁があり、政治意識の醸成は簡単でないというのが彼らの本音と見た。
 
 では、大学生は高校生より政治的関心が希薄か。この日、総合司会を務め、グループ討議を仕切ったのはNPO法人ドットジェイピー京都支部の11人。同志社大や立命館大の学生たちだ。彼らは投票率の向上を旗印とし、同僚の学生に国会議員や地方議員らの議員インターンシップを斡旋・紹介する学生団体のメンバーだ。同法人(本部東京)には25の支部があり、学生スタッフは約400人。京都支部は今夏92人の学生を国、地方議員らに送り込むなど全国有数の実績を誇る。

 代表の榊原明浩さん(立命館大3回生)は「高校生の力になればと思い今回コ―ディネート役を買って出た。若い世代のパワーでより良い政治、社会の実現に貢献したいが、そのためにも議員インターンシップのすそ野を高校生に広げたい」と10代の政治参加を歓迎する。その榊原さんも「大学と政治、社会には距離があり過ぎ、大学の制度改革こそ主権者教育一番の急務では」と話す。

 模擬投票で知られる林大介・東洋大学准教授は「主権者教育と市民意識を育むシティズンシップ教育は同義語。だから主権者教育は小学校から必要」と指摘するが、こうした教育理念の実践改革こそ若者世代の政治離れ防ぐ一番の近道と実感した。(教育ジャーナリスト 佐藤 徳夫)

 
image
image
討論に花が咲く
(京都教育懇話会公開学習会で)
image
時には大人も交え、
討論に花が咲く
(京都教育懇話会公開学習会で)