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[Columns]京都から出てこい世界の次世代リーダー

 最近、日本外交のあり方や国際政治を巡る議論がかまびすしい。とりわけ沖縄・尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件以後、急速な盛り上がりをみせ、有効な手立てを打てない政治の無策に「日本は大丈夫か」といった会話が日常的に交わされるまでになった。「今の日本には世界を相手にきちんと日本のプレゼンス、存在感を示せるグローバル人材がいない」「次世代リーダーの育成こそ急務ではないか」。人材不足を嘆く声が毎日挨拶代わりのように世上飛び交う中で次世代教育の現場を取材し、明るい話題を発見したので紹介したい。
 日本の教育が国際化に対応できていない現状はネイティブの教員や研究者が少ない大学をみれば一目瞭然だが、立命館宇治中学校・高等学校はグローバルリーダーの育成を旗印に成果を上げ、海外からも注目されている。
 11月の初旬に宇治中高を訪ね、キャンパスを歩いて驚いた。いきなり廊下に流暢な英語の会話が響いた。ちょうどランチタイムの時間で部屋に入ると、数人のネイティブ教員を十数人の生徒が取り囲み、何か打ち合わせの最中だった。会議は約15分。この間日本語は一言も交わされない。この日の会議は世界十数カ国から提携校の高校生らを招いて来年2月に開く国際学生フォーラム(テーマは「平和と国際理解」、期間は1週間)のランチタイムミーティングとのこと。フォーラム開催の主役は宇治高生たちだ。
 「平和問題について高校生が言葉や互いの価値観を超え(共通語の英語で)討議し理解を深める。こうした交流が生徒の国際性を本物に磨き上げる」と話す汐崎澄夫校長。発言の端々に、国際化で出遅れた日本の教育への危機感がにじみ出る。
 立命館宇治高校は1994年、宇治高校から転身を図り、「第2創業」した。その創立理念がグローバル時代に対応した高校づくりで、早くから英語を学ぶのではなく「英語で学ぶ授業」に取り組んできた。この4月には関西地区で初めて国際バカロレア(IB)認定校として授業を開始した。
 IB教育は世界統一基準のプログラムで構成され、当プログラムの生徒は一定条件を満たせばハーバードやオックスフォードなど世界100カ国2000大学への出願若しくは入学の資格を手に入れることができる。国語以外の授業は全部英語だ。
 多くの生徒はIB教育とは別枠のプログラムだが、英語水準は高く、高2から仏語、独語、中国語などの第二外国語授業を選択できる。中高の帰国生(32カ国)は約300人。海外に留学する生徒は毎年100人を超え、「中高6年(生徒数は約1600人)間に海外で一人暮らしできるコミュニケーション能力が習得できる」という。
 宇治中高の強みは知・徳・体の全人教育にある。とりわけクラブ活動には中高とも9割以上の生徒が所属し、女子陸上のほかアメフト、サッカー、野球など全国制覇を狙う強豪チームがひしめく。学生レスリング日本一に輝いた水口貴之外国語科教諭は宇治高時代に部活で自己を律し目的意識を持つ大切さを学び、「今でも目標が弁護士なら司法試験合格の自信はある」と言い切る。「世界の頂点を目指すアスリートになればごく自然にグローバルに通用する基礎的な素養、人間力が磨かれる」、「高みを極める文武両道の精神こそグローバル人材育成の要諦」と汐崎校長は断言する。挑戦は始まったばかりだが、閉塞日本を打開する先進モデルにと期待を高めた取材だった。(T・S)