
町屋婚礼調度・鏡台(洛東遺芳館所蔵・京都府)
|
日本には、庶民の生活の必要から生まれ、育まれ、受け継がれていったさまざまの工芸品もある。関西においては兵庫県の丹波立杭焼や丹波布がそうであり、滋賀県の信楽焼、和歌山県の紀州漆器、三重県の伊勢木綿・松阪木綿なども同様である。
これらの工芸品が何故生まれたか。その大きな要因は、素材とする自然の材料を近隣で豊富に産したことである。丹波立杭焼や信楽焼のふるさとは良質の陶土に恵まれ、丹波の畑で作られた綿や山の木皮を原料に丹波布が作りだされた。紀州漆器の産地、海南市黒江は、木地(木型)に用いる檜材が豊富であった。また伊勢木綿や松阪木綿の生産も、伊勢平野の肥沃な土と伊勢湾から穫れる雑魚を原料とした肥料とで、木綿栽培が盛んに行われたことに起因している。暮らしの中の工芸品は、まずこうした自然条件の上にあたかも樹々の実りのように各地で誕生していったのである。そしてそれを育んだのは、巧みな人の手であり根気であった。また時代によっては審美の眼をもつ権力者によって、それらが守られ育てられていった。
|